薬学図書館員基礎知識
電子ジャーナルとは
電子ジャーナルの歴史
電子ジャーナルの基礎知識
電子ジャーナルの利用環境
電子ジャーナルの主な出版社
日本の電子ジャーナル
機関リポジトリ
オープンアクセス
電子ジャーナルとは“インターネット上で本文を閲覧できる電子ファイル媒体の”雑誌”のことで、資料形態が既存のプリント版から電子ファイルへ変わっただけです。しかし、電子ジャーナルは、研究者の投稿、査読、出版流通、図書館での購読と管理、利用者への提供方法、さらには利用者側からみた利用方法にいたるまで、多岐多面にわたって大きな“変化”をもたらしました。資料形態を変えただけである電子ジャーナルの出現により、・研究図書館、研究者、学生の雑誌のよる学術コミュニケーションは様変わりしています。
電子ジャーナルのファイルには基本的にPDF形式とHTML形式があります。
PDF形式はプリント版ページイメージのそのままのもので、これを表示させるには、米国Adobe社製のAcrobat Readerという無料のソフトを使います。これは画面で見るよりも、印刷して読むのに適しています。
逆にHTML形式はWeb上での表示に適しています。図表は縮小(サムネイルなどと呼ばれている)されて配置され、必要に応じて拡大して表示させます。HTMLはテキストベースのファイルなので、探している言葉を検索することも可能です。状況に応じて使い分ければ、便利さは増します。
図書館でのメリットは、ほとんどが労働コストに影響します。今まで受入にかかっていた手間、未着欠号発生時の対応、製本準備や製本発注、貸出、督促、配架などの閲覧業務が発生しません。これらは、図書館員の労力の軽減、図書館運営費の削減になります。また、図書館が抱える書庫スペース問題の解決となります。但し電子ジャーナルを導入することによる、サービス維持(雑誌のオンライン登録、OPACのメンテナンス)のための手間がかかることも忘れてはなりません。
電子ジャーナルは、利用契約を打ち切るとその瞬間に過去に契約した分も利用できなくなります(買い切り契約を除く)(但し、出版社、タイトルにより一定期間経過後はフリーアクセスできるものも増加しています)。
インターネット上の資料を提供する場合、ネットワーク環境の品質に左右されます。時間帯によるネットワークの渋滞からレスポンスが悪くなる、またサーバの不具合やネットワーク機器の故障やメンテナンスで利用できなくなると、図書館の停止を意味します。
電子ジャーナルを印刷して読む時、画像データの色の再生がプリンターの性能に左右されることがあります。高解像度のカラーレーザープリンターなど対応機器の設置と導入コストの問題もあります。
利用者自身によるパソコンやソフトの操作が必要であるうえ、出版社により画面レイアウトが異なるので、プリント版の手軽さに比べると利用者によってはややハードルが高いといえるかもしれません。
紙は数百年以上の保存が確認されていますが、デジタル資料の保存に関しては、未知の問題もまだ多い状態です。大量に生産され、流通している電子ジャーナルのファイルが時代と共に適切にコンバートされ、永久に保存・再生できる保障を追求していく必要があります。
電子ジャーナルを利用するには、インターネットに接続可能なパソコンとInternet ExplorerやFirefox などのブラウザソフトとドキュメントビューワーです。
電子ジャーナルを利用する場合、アクセスした者が利用を許可された者か否かを見極めるための認証を行う場合が多くなっています。
主な認証方法としては:
の3つがあります。
IP認証は、利用可能な機関内LANのIPアドレスを電子ジャーナル提供先に登録します。利用者からのアクセスは機関内の登録されたIPからのものであれば、利用を認めるというものです。
日本の学術情報出版界は、海外と比較できるような大手商業出版社はなく、大学や学協会による出版の方が多い状況です。アグリゲーター型としては国立情報学研究所(NII)のCiNii, JAIRO, SPARC Japan、科学技術振興事業団(JST)のJ-STAGE、等があります。
機関リポジトリ(Institutional Repository=IR)とは、学術機関がその知的生産物である研究成果を、電子的に集積し、保存・公開するために設置するアーカイブシステム、保存書庫および提供までの一連のサービスを意味しています。日本における機関リポジトリは、2002年8月に千葉大学がシステム設計取り組み開始に始まり、2004年6月のNII IRP-Workshop、2005年度には「次世代学術コンテンツ基盤協同構築事業」、国立17大学と早稲田・慶應大学の参画、そして2006年度のNIIのCSI事業の一環として公募開始と進捗してきています。2009年までに130余りの機関が機関リポジトリサービスを提供していまする。特徴ある機関リポジトリのサイトとしては以下があります。
機関リポジトリを経由して公開される論文は原則として無料公開ですが、一部有料のものもあります。他に国内外の学術図書館が各研究機関から発行される、紀要、雑誌論文、研究報告、プレプリント、ポストプリント、学位論文等を電子化し、公開するプロジェクトも進んでいます。
オープンアクセス(Open Access=OA)とは、デジタルで、オンラインで、無料で、著作権・使用権制限の多くを受けない文献資源をさします。インターネットおよび著者・著作権保有者の同意によって実現しているものです。大半の学問主題分野において学術論文の著者は対価を求めないのが一般的であるため、オープンアクセスという考え方に同意できると言ええます。
近年出版社の寡占化や、学術雑誌価格の高騰などから、出版社が主導権を握る学術コミュニケーションの仕組みを変革しようという志向が高まり、学術情報の流通に対する危機感を持つ学術情報の生産者である研究者が、自身の研究成果を世界中に配信しようとしたことからオープンアクセスが出現し、そのタイトル数や取り扱い団体は増加しています。
オープンアクセスの提供形式としてはオープンアクセスジャーナルとオープンアクセスアーカイブあるいはリポジトリがあり、オープンアクセスアーカイブあるいはリポジトリは、査読は行わず蓄積保存した資料を世界中に無料で利用可能にするものです。オープン・アクセス・アーカイブあるいはリポジトリには、査読を受けていないプレプリント、査読済みのポストプリント、あるいはその両方が含まれています。オープンアクセスジャーナルは査読後、受理された論文を世界中に無料で利用可能にするものです。
代表的なものに、SPARC(Scholarly Publishing and Reseach Coalition)、PLos(Public Library of Science) 、PubMed Central、Free medical Journalsなどがあります。