概論
薬とは何でしょうか くすりの種類 くすりの種類:形、用途、作用、由来などの分類
『食品薬学ハンドブック』※1では、「くすり」について、以下のように説明しています。
「くすり」は、人間に有益で人間の体を正常にしていくものの総称と言えます。その中で、「医薬品」は、最適な用法・用量を吟味されたうえで、薬機法※2で規定規格が厳密に定められているものです。
薬機法で定められた、日本における「医薬品」は、次のようなものになります。
薬機法 第二条 この法律で「医薬品」とは、次に掲げる物をいう。
また、『薬学概論 改訂第4版増補』※2では、
「現代では、医薬品は生理性・物質性・医療経済性・医療倫理性という四つの基本的要素をあわせもつものであると認識される」
と定義しています。
万葉集の中に、歌人であり武人でもあった大伴旅人の「くすり」を詠んだ歌があります。
我が盛り いたく衰(くたち)ぬ 雲に飛ぶ
久須利(くすり)はむとも また変若(をち)めやも
言語学者によれば「くすり」の語源は「奇し」で、人の肉体・健康・生命などに奇妙な働きをする物質、つまり霊薬とか仙薬といわれるものを指し、転じて「いやす」の意味も持つのだそうです*3。
※1 食品薬学ハンドブック 北川勲, 吉川雅之編 講談社サイエンティフィク 2005
※2 医薬品、医療機器の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(医薬品医療機器法)
※3 薬学概論 改訂第4版増補 辰野高司ほか編, 遠藤浩良ほか著 南江堂 2005 p.5
※4 和田忠夫 「くすり」について調べる前に 薬学図書館 54(2), 2009, 78-81.
人間に有益で人間の体を正常にしていくものの総称としての「くすり」に含まれるものは、次のようなものがあげられます。
医薬品 | 人又は動物の疾病の診断、治療又は予防に使用されることが目的とされている物(薬機法 第二条) | -下表参照 |
医薬部外品 | 人体に対する作用が緩和なものであって機械器具でないもの及びこれらに準ずる物(薬機法 第二条第2項) | 薬用化粧品、育毛剤、入浴剤 など |
化粧品 | 人の身体を清潔にし、美化し、魅力を増し、容貌を変え、又は皮膚若しくは毛髪を健やかに保つために、身体に塗擦、散布その他これらに類似する方法で使用されることが目的とされる物で、人体に対する作用が緩和な物(薬機法 第二条第3項) | 基礎化粧品、メーキャップ化粧品、シャンプー など |
特定保健用食品(トクホ) | 有効性や安全性等に関する科学的根拠が厚生労働省により審査され、許可を得てはじめて販売できる。特定保健用食品には許可(承認)マークが付いている | 例:血圧、血中のコレステロールなどを正常に保つことを助けたり、おなかの調子を整える食品。ヘルシア緑茶など |
栄養機能食品 | 身体の健全な成長、発達、健康の維持に必要な栄養成分の補給・補完を目的とした食品であり、高齢化、食生活の乱れ等により通常の食生活を行うことが難しく、一日に必要な栄養成分が取れない場合に、その補給・補完のために利用する食品。栄養機能食品と称して販売するには、許可申請や届出の必要はないが、国の定めた規格基準に適合する必要がある | 例:カロリーメイト |
健康食品 | 一般に「健康によい」として売られている食品全般が該当し、明確な定義はない。国民生活センターでは「消費者が健康に良いと積極的な効果を期待して摂取する医薬品以外の食品」としている。健康食品には、動物や植物から抽出された「健康機能がある」といわれている成分を原料にしている健康補助食品的なものが多く、その他通常の食品の形態をもつものとして、自然食品、有機栽培食品等も含まれる。※4 | 例:オロナミンC ハーブのラベンダー |
薬機法で規定する医薬品は、使用上のコンセプトやリスクに応じて細かく分類されています。
医薬品 | ||||||
薬局医薬品 | 要指導医薬品 | 一般用医薬品 | ||||
医療用医薬品 | 薬局製造販売医薬品(薬局製剤) | 第一類医薬品 | 第二類医薬品 | <第三類医薬品>第三類医薬品> | ||
処方箋医薬品 | 処方箋医薬品以外の医薬品 |
※5 薬学と社会 薬事関連法・制度 改訂第2版 秋本義雄、岸本桂子ほか共著 南江堂 2020
剤形分類 | 散剤、顆粒剤、錠剤、液剤、軟膏剤、貼付剤、坐剤、口腔内崩壊錠、腸溶カプセルなど |
薬効分類 | 症状:血糖降下剤、降圧剤、利尿剤、鎮痙剤、睡眠剤、鎮痛剤、抗炎症剤など 疾病:抗糖尿病剤、抗リウマチ剤、抗精神病剤、抗マラリア剤など |
薬理作用分類 | セロトニン再取り込み阻害剤、非脱分極型神経筋遮断剤、炭酸脱水素酵素阻害剤、HIVプロテアーゼ阻害剤など |
構造・由来分類 | 副腎皮質ステロイド剤、マクロライド系抗生物質、モノクローナル抗体、キメラ抗体など |
用途分類 | 治療薬(内服薬、注射薬、外用薬)、予防薬、診断薬など |
WHOの分類にしたがって器官別分類が多いが、以下の原因の様式別分類があれば予防と治療に役立つ A.薬理作用の強調(効きすぎ) B.特異的作用(主作用以外の固有の作用) C.慢性作用(連用で発生するもの) D.遅延効果(投薬を中止した後に生じるもの) E.中止効果(投薬の中止が原因になるもの) F.治療失敗(効果を発揮するのを阻害する要因の見落とし)